2016年1月22日

第2回講習会「ここまで、わかったお茶の香り」レポート

平成27年11月5日、東茶協ホールにおいて、農研機構 野菜茶業研究所主任研究員・水上裕造氏を講師に迎え、第2回講習会を開催しました。

第1回に比べ、男女、年齢もヴァラエティ―にとんだ約30名の受講者が集いました。その模様についてレポートします。

お茶の香りの研究について

こんにちは、研究機構の水上です。私はお茶の香りを中心として研究をしています。昨年に引き続きお茶の香りについてお話をさせていただきます。私が茶の香りを研究するようになったのは、当時、野菜茶研究所 茶品質化学研究室長であった木幡先生の勧めでした。茶の効用や味の研究に比べ、香りの研究は非常に遅れており、まず香りに何が寄与しているのかを解明することが急務でした。そこで7年ほど前から香りの研究に着手しました。

講習会テーマ

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理事長挨拶

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香りの分析にはGCという機械で分析するのですが、機械と人間の嗅覚は検出する成分及び、その強さが異なること、GCで検出できないほど極微量に含まれている成分が香りに強く寄与すること、さらに香りを抽出しても元の香りを再現しにくいといったことが理由でお茶の香りの研究がなかなか進みませんでした。

新しい機械の開発

その後、GCと人間の嗅覚を利用したGC・Оが登場し、お茶の香りの研究が進められました。このGC・Оによって、実際に人間が感じる香り成分を分析できるようになりました。これまで、青葉アルコールが新鮮香であると言われていました。確かに青葉アルコールはお茶に多く含まれているのですが、GC・Оで分析するとお茶の香りにあまり寄与していないことがわかりました。青葉アルコールは人間が感じられる濃度は非常に高いので、さほどお茶の香りに影響しないということになるかと思います。

講義風景

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お茶の代表的な香りについて

お茶の香りは非常に多様です。産地、製法によってだいぶ異なりますし、品種によっても違いがあります。今日、お話しするのは代表的な香りである「火香」「みる芽香」「新鮮香」「萎凋香」についてです。これらの香りはGC・О分析をすると、どの成分が関与しているのかがわかります。

「火香」は仕上げ工程における「火入れ」で発揚します。香ばしさや甘い香りがお茶に付与し、一方で「青臭み」が緩和されます。火入れにより、香ばしい匂いのピラジンや甘い匂いのフラネールが強く関与するようになります。

「みる芽香」は一番茶でも非常に柔らかい新芽〜製造された荒茶から多く感じます。お茶のふくよかな緑の香りです。この「ミル芽香」には青臭い匂いのメチルノナンダイオンやキュウリの匂いのノナジェナールが強く関与しています。

「新鮮香」は爽快な緑の香りがあります。特に新茶に強く感じるものがあります。「みる芽香」と同様に柔らかい新芽から製造された荒茶から強く感じられます。山間地で製造された荒茶から特に感じられます。「新鮮香」には爽快な花香があるリナロールなどが関与しています。

「萎凋香」は台湾産の包種茶や高山烏龍茶に認められるフレッシュな甘い香りです。摘採された茶の生葉を太陽の下や室内で萎れさせると「萎凋香」が発揚します。甘い香りのジャスミンラクトン、香りに重みを与えるインドール、強い花香があるフェニルアセトアルデヒドなどが関与するようになります。

官能検査により香りの特徴を捉え、さらにGC・Оなどの機器分析によりその香りが解明されることにより、品質管理や製造技術の維持・向上だけでなく、育種、栽培に活かされるようになります。まだ、わからない事も多くあり、香りの研究は非常に夢のある分野と言えます。

GC-O

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香りについて

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お茶の香りの質疑応答

司会者:
ここで4班に分かれて香りのサンプルを嗅いでいただきます。その後、質問を受け付けます。

質問:
火入れ香と甘い香りのするバニラ香についいては非常にわかりやすく、化学的合成で作れるとお話でしたが、ミル芽香、新鮮香についてどうなのでしょうか。

水上:
お茶の香りだけではありませんが、香りというのは単独の成分で表せることはほとんどなく、多くの成分の調和によって形成されています。先ほど、説明した通り、それぞれの香りに寄与する成分がわかってきました。市販されていない香り成分は有機合成によって作り、個々の成分を一定の割合で混ぜ合わせるとその香りの近くなります。しかしながら、完全に再現できているかというとそうではありません。つまり、人間が感じにくい成分も、他の成分と混ざることで香りを作る重要な役割をする可能性があるのだと思います。

司会者:
続いて予定している川根のお茶を見て、飲んでいただければミル芽香、新鮮香がどういうものか今一つわからないという方もおわかりいただけると思います。後程、用意しますのでお楽しみにしてください。

質問:
香りの成分の中でピラジンがあると、ほっとするといわれましたが、確かに食後にほうじ茶を飲むとほっとする気がします。逆にフレッシュ感のあるお茶は「ファイト一発!」とまではいかないですが、やるぞ!という気がしてきます。

水上:
感じ方は人それぞれと思いますが、そんな風に感じてもらえればうれしいですネ。よく「香味一体」といいますが、私は香りも味の一部であり「香りも味のうち」と思っています。アンケート結果を見るとお茶を飲む理由はほっとしたい、リラックスしたい等、いわゆる「情緒的価値」が高いといえます。

香りのサンプル体験

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質問:
先ほどフレッシュ感のあるお茶はシャキッとするといわれた方がいらっしゃいましたが、そういったアピールの仕方が必要と思うのですが?

君野理事長:
昔から、朝のむ茶(朝茶)はその日の難逃れ、朝茶は七里戻っても飲めといわれています。私は折りに触れてその話をしていますが、そういった訴求の仕方も考えてみたいと思っています。ただし、丁寧に説明することが求められていることと思います。

質問:
少し、はずれる質問かもしれませんが、香りについては劣化するというか、抜けるというか、特に新鮮香についてはそうです。私の店では保守的におおむね6か月を賞味期限にしていますが、近年は12か月という感じのものが多くなっている気がします。この点についてはいかがでしょうか。保守的に考えていることが、お客様によっては古いという印象を与えているのかと、少し気になっています。

水上:
新鮮香があるお茶は保存期間が短いので、できる限り早めの飲んだほうがい良いと思います。ただし、お茶は保存すると、熟成するので香りは変化します。熟成によって香りや味のトゲが取れまろやかになります。もちろんすべてのお茶ではありませんが、そういった香味の変化を愉しむのもお茶の魅力の一つではないでしょうか。

お茶を保存しているうちに酸化などの化学反応で香り成分は変化します。試験研究で用いられる保存の指標として、ビタミンCがあります。ビタミンCは酸化を抑える働きをします。ビタミンCが保存開始時の85%以上を保持していれば、品質は保持されていることが証明されています。温度や水分含有量などの保存条件とビタミンCの関係は明らかにされていますので、そちらを参考にしてください。

司会者:
先ほどの質問の答えになるかは判りませんが、私は秋口からのお茶はあまり心配していません。問題は新茶期のお茶で開封後だと思っています。2週間程度で飲んでいただきたいとお客様にいっています。それは、先ほどの水上先生の話から分かる様に新茶の性質からということを説明すればもっと親切だと思います。ちなみに茶の賞味期限については自主的に判断するということになっています。ですので、開封後の問題についてのお客様への情報提供については考えてみる必要があると思います。年に何回、茶をいつ摘むのかもご存じない方も増えていますので、今までとは違う取り組みが必要と思います。

山のお茶・川根の浅蒸し茶を飲んで考えた

司会者:
今回は2人生産農家の浅蒸し荒茶を中心に感想を述べあっていただきたいと思います。実は水上先生から質問を受けたのですが、私の川根茶のイメージはあまり良いもではありませんでした。茶葉は細撚りできれいですが渋めで味が薄いというのが私の印象でした。それと同時にフレッシュ感のあるお茶が少ないと嘆いていたところ、「そういうお茶ばかりではありません。これを飲んでください。」というお茶が今回用意した、川根の標高600mと290mのお茶です。

近年、深蒸し茶の割合が高くなり、浅蒸しのお茶を扱うお茶屋が少なくなっています。浅蒸しのお茶の素晴らしさを今一度、見直す、或いは新しい発見になる方もおいでになるかもしれませんが、お茶を見て、嗅いで、飲んで感想を述べあってください。

川根茶試飲風景

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感想:
荒茶でも茶葉はきれいですネ。水色は透明感のある黄色です。おいしいです。

感想:
淹れたあとの茶葉もきれいです。こういうものも取扱いたいと思いますが、最低ロットと価格が問題になるのではないのでしょうか。

司会者:
今回は価格のことは考慮しないで、こういう傾向のお茶はどうですかということなので、価格が大事なことはもちろん判るのですが……。

君野理事長:
川根のお茶、特に浅蒸しのしっかりした茶葉のお茶を取り扱っているところは少ないと思います。収穫量が少ないという問題と農協の協力の程度が他の静岡よりも弱いのでないかという気がしています。これを良い機会としてお互い協力していければと考えています。

感想:
水色は濁りがないので、耐熱ガラスの急須で淹れたら茶葉も葉の形が残って素敵だと思います。

感想:
フレッシュ感(新鮮香)と滋味を感じます。冷茶でもおいしいのではないかしら。これは荒茶ですが、仕上げ茶になると香りはどうでしょうか?

生産農家:
残念ながら、香りは薄くなります。そこが課題です。

繁田副理事長:
この企画はこのお茶が「上手いお茶」の一つの答えではないかという提案です。深蒸し茶になれたお客様にどういう提案をすれば購入していただけるのか。確かに対面販売で商品知識がなければ売るのは難しいお茶だと思います。幸いにも私たちは対面販売が主です。どうすればこのようなお茶の素晴らしさをわかってもらえるのか組合としても知恵を出したいと思います。

以上がお茶の香りと川根の浅蒸し茶についての主な内容です。

同時に開催した「フィルターインボトルでいろいろなお茶を試そう」後日報告させていただきます。

文責:調査部長 深谷智治

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