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【連載】おいしいお茶を淹れる ステップ2「お茶を知る【後編】一杯のお茶にすべてが含まれている」

連載「おいしいお茶を淹れる」:目次

  1. プロローグ
  2. ステップ 1「基本的なお茶の淹れ方を知る」
  3. ステップ 2「お茶を知る【前編】茶種を知ろう」
  4. ステップ 2「お茶を知る【後編】一杯のお茶にすべてが含まれている」
  5. ステップ 3「お茶に合った淹れ方が出来る」
  6. ステップ 4「飲む人に合わせて淹れる」

ステップ2「お茶を知る【後編】一杯のお茶にすべてが含まれている」

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私たちが何気なく飲むお茶の一杯には、

  1. どこで出来たお茶か(風土)
  2. どのように育てられたお茶か(肥培管理)
  3. どのように加工されたお茶か(荒茶加工、仕上げ加工)

など、細かくみればみるほど、いろいろな要素や情報が包含されていることを、読み取る事ができます。

そしてその長所や欠点を知れば、そのお茶はどのように淹れたら良いものかが、分かってくることでしょう。

ここではその要因となるところを勉強して、そんな謎解きに挑戦してみましょう。

1)風土

お茶にとって、どこで採れたか、どのような土壌で育った木か、どのような気象条件の中で摘採されたかは、非常に重要なことです。

それは、その茶の葉が持っている「前提」のようなもので、この葉以上のお茶は出来ないと考えるのです。すなわちこの葉っぱの良さを、人がどれだけ引き出せるかということになります。

まず土壌についてみると、福岡の八女から高知、宇治、川根、本山と一列に名産地が並んでいます。即ちこのベルトは古い地層が走っています。そして深山幽谷、山深く川が流れており、水はけが良く、川霧が立つ産地です。

言い換えると、川が流れていることで肥沃な土地となり、水はけが良いことで葉肉が薄く、川霧が立つことで直射日光に当たらず天然玉露のように葉もやわらかくなり、山間ということで日照時間が短くなる。

このようなところが昔ながらの名産地です。

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それに比べて、静岡でも海に近い海岸寄りの台地は、下茶の代名詞のような場所でした。

平坦地で日照も強く長く、葉の表面はこわく、葉肉は厚い。

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また土壌的に、鹿児島や狭山について言えば、共に火山灰で水はけの悪いシラス台地、関東ローム層と呼ばれる平坦な台地で、晴れると砂埃が舞い、雨が降ると水はけが悪くぬかるむ、名産地と比べると非常に条件の悪い産地で、これはどのようにしても勝負になりません。

しかし「氏より育ち」と言うように、お茶の世界も良いところばかりが良い思いをするとは限らないのです。深蒸しの加工技術や新芽の早く芽立つことを活かしたり、火入れ加工によって、今では名産地以上の一大産地に成長してしまいました。

2)肥培管理

お茶の味は肥料によっても大きく違ってきます。

昔は油粕にも十分な脂が残っていたし、魚粕もまだニシンなどが安価で、過去には畑に数の子がみられることもあったということです。

有機的な肥料が十二分に撒かれ畑にはミミズが這い、それをモグラが地中を追いかける。

特に品評会のお茶を作るには、多くの肥料を入れ込みました。しかし現在は環境汚染の問題でチッソ54Kgという制限が設けられ、肥料構成も無期肥料が多く使われるようになりました。

山間地のお茶作りに比べると、平坦地の葉肉の厚いお茶の木は、多くの肥料が必要になります。また鹿児島のような4茶まで摘採する地域は、多くの肥料が必要となります。地域によっては、同じ制限を受けてのお茶作りによって茶の木が疲弊し、昔に比べると味が薄くなり、苦味も少なくなっているのが現状です。

3)加工

お茶の味が加工によって変わる部分は、荒茶加工による蒸熱(蒸し方の度合)と、仕上げ加工による火入れ乾燥の部分です。

前記に示したように、お茶に合わせて加工することが求められます。

山間地の葉肉の薄いお茶は、深蒸しにすると茶の葉が壊れ、粉になってしまいます。

また山間地独特の香気も失われてしまうので、中蒸し、普通蒸し、または若蒸しにして香気を活かした作り方にします。

また摘採時期もあまり早いと苦渋味が強くなるので、ある程度熟度ののる時期を待って摘採します。

深蒸しが流行する前は、名産地がその産地の持つ風土を活かした香気を発揮し優秀を競っておりました。

劣勢にあった葉肉の厚い平坦地の産地は、葉肉の厚さを活かした深蒸し茶を作ります。

研究・努力の結果、日常飲みやすいお茶として消費者に受け入れられ、お茶の消費の主流を担うようになりました。

そしてお茶の色(水色)は山吹色が良いとされていたものを、お茶はグリーン色というイメージにまで変えてしまいました。葉表面を深く蒸すことによって葉の表面が壊され、葉肉が浸出・浮遊して、グリーン色に見えます。

山間地に比べ、摘採時期も早めに摘採することで香気を保ち、葉肉の厚さを活かした味の濃いお茶を作り出しました。

もう一つ人工的にお茶の味を変えるものとして、仕上げ火入れがあります。仕上げ火入れは、現在大きく分けて次の3つの方法で行います。

  1. 直火式のドラムと言われる火入れ
  2. 網を張った引き出しにお茶を薄く広げ熱風を透すことで乾燥する透気式乾燥 (現在は機乾燥機の中をベルトに載ってお茶が連続して乾燥する)
  3. 電子レンジで乾燥するように水分を抜く遠赤外線乾燥

また、これらを組み合わせて、火入れ乾燥をする方法があります。

一般の消費者が誤りやすいのは、火香が強いとお茶の香りが高いと錯覚する方が多いのですが、お茶本来の香と仕上げ火の香は違うのです。

1番のドラム火入れは、お茶の芯に多少の水分を残し表面を焦がすような状態で火香が付きます。上手に火入れる事が出来れば、この方法が一番お茶の旨みを引き出すことが出来ます。この方法による旨みは、特徴的には釜製玉緑茶に感じられます。

2番の透気式は、熱気によって茶の外部から乾燥していくもので、芽の柔らかいものや品評会茶のような高級茶に向いています。

3番は、電子レンジで熱を発して乾燥するような方法で、遠赤外線で茶の芯の水分から乾燥してしまうのでこの方法は火香を付けずに乾燥をする事が出来ます。良いお茶はお茶の持つ薫りをそのままに火香を付けず仕上げることもあります。中〜下茶は効率的に、その後1番のドラムを組み合わせて、直火によって仕上げ火を付ける方法が多く行われています。

仕上げ火入れの判断は非常に難しく、天候や気象などによってその年々のお茶の出来が違い、繊維質の多い年やその他の条件によって乾燥温度を上げ下げして時間を長く乾燥したりします。

新茶のスタートには毎年同じ設定ではいかず、官能検査を頼りに決まるまで設定に手間暇が掛かります。

ちょっと難しい勉強でしたが、次回はこの3つの要因をふまえて、お茶の淹れ方に挑戦してみましょう。

次の記事は、ステップ 3「お茶に合った淹れ方が出来る」です!